和光堂トップ わこちゃんカフェ 赤ちゃん通信  赤ちゃん通信 No.27
赤ちゃん通信

No.27 食べる機能を育てる

「食べる」ことは命を育むことです。赤ちゃんはおっぱいを飲むことから、離乳をはじめて少しずつ食べることを練習していきます。食べる力を育てるには、その機能の発達を理解したうえで、適切な時期に働きかけることが大切です。

今回の「赤ちゃん通信」は、赤ちゃんの食べる機能の発達について、日本歯科大学附属病院准教授 口腔介護・リハビリテーションセンターの田村文誉先生に解説していただきました。

乳幼児の摂食機能の発達

栄養摂取方法
ひとの栄養摂取方法には、摂食・嚥下機能と哺乳機能の2通りがあります。前者は通常、生後5、6か月くらいから獲得され始め、その後一生涯使っていく機能です。しかしその前に、哺乳機能により栄養摂取をする時期があります。これは自分の意思である随意の動きではなく、原始反射のうちの哺乳反射によって、不随意の動きでなされる機能です。生まれてすぐには、脳の第一次中枢である橋や延髄などの脳幹部の働きによって、摂食・嚥下機能がコントロールされています。これは、原始反射や嚥下反射、呼吸反射など、生きていくためには必要最低限の不可欠な能力です。しかし、やがて大脳の上位部分である大脳皮質の発達がなされていきますが、この大脳皮質は第二次中枢として、生きるための基本である第一次中枢をコントロールする役割を担っています。この大脳皮質の発達に伴って反射が消えていき、自分の意思で動かす随意動作を行えるようになることで、離乳が始まっていくと考えられています。
図1 摂食・嚥下の神経支配機構
図1 摂食・嚥下の神経支配機構
発達の原則 1)

食べる機能の発達には、いくつかの原則があります。

(1) 個体(子ども本人)と環境の相互作用

子ども本人の発達する力(内部からの発達力)と、そして子どもを取り巻く周囲からの適切な刺激(良い環境)があります。これらが相互に働きあうことにより、機能の発達が促されていきます。

(2) 発達には最適な時期がある

もちろん最適な時期を過ぎても、摂食・嚥下機能の発達はなされていきます。しかしながら機能が発達する最も活発な時期は、生まれてから2歳頃までとされており、この時期に適切な働きかけをすることが大切になります。

(3) 一定の発現順序がある

乳幼児が摂食・嚥下機能を獲得していくには、身体の発達と同じように一定の発達順序があります。身体の発達は、はじめに首がすわり、お座りができ、はいはいをしてから立ち上がり、伝い歩きをし…というように、多少前後するにしてもある程度の順番があることを、多くの人が理解しています。しかし、食べる機能にも発達の順序があることは、意外と知られていません。そのため、離乳食の進め方を急ぎすぎたり、子どもの機能に合わない硬さの食べ物が提供されたりしてしまうことがあります。

(4) 予行性がある

ある動きが上手になると、次の段階の動きが現れやすくなる、という意味です。舌の動きがよくなり、舌で押しつぶすことが上手になっていくと、ある拍子に咀嚼の動きが出てくる、といったようなことが起こります。

(5) 直線的ではない

発達は、まっすぐ順調に伸びていくわけではありません。できるようになったな、と思ったら、急に下手になったり、また急に上手になったりと、進んだり後戻りしたりしながら発達していくのです。

(6) 個人差が大きい

機能の発達の進み方には、個人差があります。同じ年齢や環境であっても、同じようなものが同じように食べられるとは限らないのです。隣の子どもが肉や生野菜を食べているからといって、嫌がるものを無理に食べさせる必要はありません。

以上のように、発達には原則があります。スタート地点を急ぐ必要もないし、また急いでもそれが有利になることもありません。子ども自身の持てる力に合わせて、進めていけばよいということです。

口腔と咽頭の形態 〜哺乳期〜

生まれたばかりの乳児の口腔や咽頭は、哺乳を行うために適した形態となっています。

(1) 吸啜窩きゅうてつか

口蓋(上あご)の形態は、将来、歯が萌出してくる歯槽堤しそうていという土手のような盛り上がりの内側に、もうひとつ土手があります。これは副歯槽堤とよばれ、線維質で構成されています。この副歯槽堤があることにより、口蓋の中央に吸啜窩というくぼみが形成されます。乳児はこの吸啜窩に乳首を引き込んで固定することで、安定した吸啜を行うことができるのです。

(2) ビシャの脂肪床

頬粘膜両側に、脂肪組織によってできた膨らみをビシャの脂肪床といいます。これにより、舌とともに上下の歯槽堤の間の隙間を埋め、吸啜圧を形成します。

(3) 顎間空隙

顎を閉じたとき、上下の前の歯槽堤の部分に隙間が空いています。これにより、乳首を潰さないようにくわえることができます。

(4) 気道と食道の分離

乳児では喉頭の位置が高く、喉頭蓋と軟口蓋の先端(口蓋垂)は重なり合っている程に接近しています。気道は食道と分離され、喉頭腔が鼻腔と直結しているため、乳汁は口腔から直接食道へ送り込まれてい きます。

これらの特徴的な口腔内の形態は、成長とともに著しく変化し、やがて消えていきます。また下顔面の成長とともに咽頭腔が拡大し、喉頭の位置も下がっていくため、嚥下の動きは乳児嚥下から成人嚥下へと変化していきます。

図2 乳児と成人の食道と気道の関係
図2 乳児と成人の食道と気道の関係(Borden GJ, et al., 1984) 2)
哺乳行動

哺乳のための原始反射としては、吸啜反射、探索反射、咬反射があげられます。これらの反射は、母親の胎内にいる間、およそ胎生8週頃から始まっているとされます。 3)

(1) 吸啜反射

口唇の正中から口腔内に入ってきた乳首や指を、舌で包み込んで引き込み、吸啜窩に押し付けながらチューチューとリズミカルに吸う反射です。

(2) 探索反射

「乳探し反射」「唇の追いかけ反射」ともよばれます。頬や口の周囲に触れられると、触れた方向へ顔を向け、口腔内に取り込もうとする反射です。

(3) 咬反射

歯槽堤の奥(臼歯部相当部)にものが触れると、顎をかみしめる反射です。後の咀嚼運動につながる動きであるともいわれますが、一方、異物が口腔内に進入するのを阻止する動きであるともされ、はっきりとはわかっていません。

図3 乳児の哺乳
図3 乳児の哺乳

これらの哺乳反射により、主として舌の動きによって連続した乳汁摂取がなされます。この頃の嚥下が、顎を開け、口腔内の奥まで乳首を引き込み、顎を開けたまま嚥下する「乳児嚥下」とよばれる動きなのです。

やがて大脳の発達とともに随意運動ができるようになると、哺乳は自律哺乳となります。哺乳反射は、生後4〜7か月頃には消失し、離乳が開始されます。

母乳と人工乳

乳汁を摂取する動きは、主に舌の蠕動様運動または波状運動によってなされ、母親の乳首であっても人工乳首であっても、基本的な運動に大きな違いはないとされています。母乳哺育と人工乳哺育に関し、その後の摂食機能に及ぼす影響についての研究はいくつかなされていますが、統一した方向性のある結果は示されていません。母乳を与えられないお母さんにおいては、人工乳哺育を心苦しく思ってしまう場合もあるかもしれませんが、過度な心配をする必要はないと考えられます。母乳哺育はとても大切なことですが、一方、母乳を与えることができないお母さんがいることも、忘れてはならないと思います。

摂食機能の発達

新しい授乳・離乳支援ガイドでは、従来の「離乳初期」「離乳中期」「離乳後期」という呼び方が消え、それぞれ「生後5、6か月頃」「7、8か月頃」「9〜11か月頃」と表記されています。しかし、子どもの発達には個人差があり、特に発達の遅れを伴う障害児ではその差は大きいと考えられます。月齢に合わせた離乳食の進め方では、摂食機能発達の異常を引き起こす可能性も考えられるため、ここでは支援ガイドに示された月齢に併記して、摂食機能の獲得段階に応じた表現も示しました。もしお子さんがここに示す月齢のとき、食べられるはずのものが食べられないとしても、焦って離乳食の形態を難しくしないでください。お子さん本人の食べる機能に合わせてあげることが、最も大切なことです。

口唇閉鎖機能を獲得する ごっくん期(5、6か月頃)

図4 口腔内のセンサー
図4 口腔内のセンサー 4)
離乳が開始されると、はじめに口唇を閉じて飲み込む(嚥下)、取り込む(捕食)機能が獲得されます。この時期は、いわゆる離乳初期に相当します。乳児は哺乳期には「乳児嚥下」を行っていましたが、離乳が開始されると、顎を閉じて嚥下する「成人嚥下」を獲得します。これは、成長とともに喉頭の位置が下がり、咽頭腔が拡大したことによって、嚥下の度に喉頭蓋を翻転させて気道を閉鎖し、食道と分離する必要が出てくるからです。また、成人嚥下の獲得とほぼ同時期に、口唇を閉鎖して食物を口腔の前方部に取り込む、「捕食」の動きも獲得されていきます。上顎の前方部の口蓋皺壁の付近は、口腔内のセンサーともいわれるべき非常に敏感な部分です。口腔内に取り込まれた食物を、はじめにここで舌と挟み込むことによって物性を感知し、大脳にその情報を伝達して、その後の処理の動き(嚥下・押しつぶし・咀嚼)を決定するとされています。したがって、口腔の前方部で食物を取り込むことを覚えるために、離乳初期は非常に大切な時期といえます。

舌で押しつぶす動きを獲得する もぐもぐ期(7、8か月頃)

離乳の初期に口唇を閉鎖して食物を処理する機能が十分獲得されると、やがて舌は上下運動ができるようになり、舌と口蓋で食物を押しつぶす機能が獲得されます。最初に覚えた口腔の前方部に取り込む動きに伴い、少し形のある軟らかい食物を押しつぶし、舌の中央部を陥凹させて食塊を形成し、咽頭へ送り込むことができるようになっていきます。

咀嚼の動きを獲得する かみかみ期(9〜11か月頃)

この頃には、舌の側方運動が可能となり、歯槽堤(歯ぐき)ですりつぶす(咀嚼)機能が獲得されていきます。舌で歯槽堤に運ばれた食物は、粉砕されるまで何度も舌により側方へ運ぶことを繰り返され、また頬も食物が口腔前庭に落下しないように外側から支えるようにしています。そして粉砕された食物は舌の中央にまとめられ、食塊形成されて咽頭へ送り込まれていきます。

自食の準備 かみかみ期(9〜11か月頃)

咀嚼機能が獲得されるのと前後して、自分の手を使って食べる自食の機能が始まっていきます。また、離乳の終わり頃から遊び食べやおもちゃしゃぶりなどが頻繁に見られますが、これは自食の準備のためにはある程度必要なことです。自分の手で食物の感触を確かめたり、つかみ方、口への運び方などを学ぶことにも繋がります。危険のない範囲内でやらせてあげることも必要です。

離乳の完了 ぱくぱく期(12〜18か月頃)

離乳期に口腔の摂食機能が獲得されやがて離乳の完了を迎えると、自食機能の獲得期となっていきます。はじめは手づかみ食べを十分やらせ、手指機能や手と口の協調運動を学ばせることが、その後の食具(スプーンなど)を用いた自食機能の基礎となります。

自食機能の獲得
図5 スプーン食べ
図5 スプーン食べ

健康な乳幼児では、およそ3歳頃を目処に自食機能が獲得されていきますが、乳歯が生えそろうのもこの頃です。したがって、3 歳くらいになると、大人と同じようなものが食べられるようになると考えてよいでしょう。 5)

障害児への摂食指導


食べる機能の障害は、乳児から高齢者まですべての年代に起こりえます。またその原因は、4つのカテゴリー、(1)形態の異常、(2)神経・筋系の異常、(3)加齢による影響、(4)心理的要因、に分類されます。

神経・筋系の疾患による機能障害の問題点としては、出生時にはあまり問題が認められなくても、成長とともに次第に食べる機能に問題が生じてくる場合があります。これは頭頸部や咽頭の形態が成長変化していくにもかかわらず、神経学的な発達が追いつかないためです。また、進行性の疾患でないにもかかわらず、変形や拘縮などにより機能獲得が困難になるばかりでなく、獲得された機能の低下も起こりえます。障害児の摂食機能の発達特徴は、(1)正常発達と順序は同じであるが、出現時期が遅れる場合、(2)正常発達とは異なる順序で、しかも出現時期が遅れる場合、(3)正常発達にはない障害児特有の異常パターンが認められる場合、に分類され、重度の障害児では、(2)と(3)のパターンを併せ持っている場合があるといわれています。 6)

障害が重篤な場合の随伴症状
(1) 誤嚥

食物が肺の方へ入ることを誤嚥といいます。重度の障害児では、むせのない誤嚥が多く、肺炎を起こして初めてわかる場合もあります。

(2) 胃食道逆流症

嚥下に伴わない一過性の下部食道括約部の弛緩によって起こります。

(3) 過敏

感覚の異常であり、乳児期による感覚運動体験不足が原因とされていますが、多くは不明です。過敏があると、介助や訓練を受け付けることが難しくなるため、感覚の脱感作を行う必要があります。

(4) 拒食(摂食拒否)

食物を食べさせようとす ると泣いて口を開けない、激しく拒否するなどの行為がみられます。自分の意思を言葉で表せない障害児においては、拒否が意思表示の手段となっているので、状況をみて注意深く対応します。

(5) 経管依存症

出生後、早期からの経管栄養により、機能的には問題がないにもかかわらず、口から食べようとしない状態で、食への意欲が認められない。乳児期における「空腹−満腹」の経験不足、味覚体験不足などが原因とされます。

(6) てんかん

重度の障害児におけるてんかんの 合併率は、50 〜 70 %にのぼります(一般人口では1 〜 2%)。てんかんそのものは、食べる機能に影響はありませんが、抗てんかん薬を服用している場合があり、薬の副作用による影響に注意する必要があります。

障害児にみられる特徴的な症状
(1) 丸呑み

咀嚼が必要な食物を、噛まずに飲み込んでしまいます。咀嚼機能が獲得されずに無理やり飲み込んでいる場合もあれば、咀嚼機能が獲得されているにもかかわらず、心理的満足感のために行ってしまう場合もあります。

(2) 押しつぶし嚥下

どのような物性の食物でも全て、舌で上顎に押し付けて、潰しながら嚥下してしまいます。丸呑みと同じように心理的満足感と結びつきやすいとされます。

(3) 舌挺出

ダウン症児など、筋の低緊張を特徴とする子どもに多い症状です。舌は低緊張状態で、前歯ないし口唇より外に突出していますが、力強さはあまりありません。

(4) 舌突出

脳性まひ児などでは全身的な筋緊張に伴って、摂食中に力強く突出することがみられます。同時に口唇の閉鎖機能が弱く、前歯部の開咬などの要因になることもしばしばです。

(5) 逆嚥下

上下の前歯部に舌を介在させ、嘔吐するかのように舌の奥を押し広げるようにして、そこに食物を落とし込んで嚥下する飲み方です。原因として、過去に寝たまま食べさせられていたり、食物を口の奥に入れ込まれていたりすることがあげられます。

(6) 過開口

捕食の際に、顎関節の最大可動域まで開き、なかなか捕食できず、勢いよく閉じてしまいます。介助の際に口の奥に入れ込まれていた経験が、原因とも考えられます。

(7) スプーン咬み

捕食の際、スプーンを口唇で挟めずに、前歯で咬みこんでしまう症状です。歯に当たる衝撃で捕食を嫌がってしまうこともあります。そのため金属製のスプーンを避け、シリコン製などを使用する場合がありますが、スプーン咬みが強いとシリコンが千切れて誤飲してしまうので、注意が必要です。スプーン咬みが強い場合には、金属製で、薄く平らなものが適しています。

障害児ではこれらの特徴的な症状のために食事介助が困難で、不適切な介助により更に症状を悪化させている場合も少なくありません。障害のある子どもの摂食・嚥下機能を促すために必要なことは、その子どもの獲得された機能と異常運動を見極め、正しい介助方法を身につけることといえるでしょう。

障害のあるなしにかかわらず、全ての子どもたちが美味しく安全な食生活を送れるよう、多職種が協同したサポート体制が望まれます。

参考文献
1)
金子芳洋編:金子芳洋、向井美惠、尾本和彦著:食べる機能の障害.医歯薬出版、東京、1987、pp9-10.
2)
Borden GJ, Harris KS: Speech Science Primer;Physiology, Acoustics, and Perceprion of Speech,Williams & Wilkins, Baltimore, 1984 (広瀬肇訳;ことばの科学入門.MRCメディカルリサーチセンター.東京、1984、pp265-267
3)
Humphery T. : Some correlation between the appearance of human fetal reflexes and the development of the nervous system. (eds;Dominick P. Purpura and J. P. Schade) Progress in Brain Research vol 4, p.104. Growth and Maturation of the Brain, Elsevier Publishing Co.,New York, 1964
4)
向井美恵編:食べる機能をうながす食事:医歯薬出版、東京、1994、p36.
5)
田村文誉、楊 秀慶、西脇恵子、大藤順子著:金子芳洋、菊谷 武監修:上手に食べるために、医歯薬出版、東京、2005.
6)
尾本和彦編著:金子芳洋監修:障害児者の摂食・嚥下・呼吸リハビリテーション、医歯薬出版、東京、2005、pp39-43.

<著者紹介>
田村文誉先生(たむらふみよ)
田村文誉先生(たむらふみよ)

【略歴】
東京都出身。歯科医師・歯学博士。
日本歯科大学附属病院准教授 口腔介護・リハビリテーションセンター。
1989年昭和大学歯学部卒業。同学部第三補綴学教室、同学部口腔衛生学教室、アラバマ大学歯学部補綴学生体材料学教室留学、2004年日本歯科大学歯学部講師、昭和大学歯学部兼任講師を経て現職。

ページの先頭へ