健やかな成長には、食事での“五感の刺激”も大切です。
五感刺激する
育児アドバイス

脳は人間にとって、とても大切な場所。
「脳の発達」というと「頭のいい子を育てる」と思いがちですが、脳の働きは知能だけではありません。
生命維持やこころを司るのも脳の働きです。
脳をバランスよく健やかに育てるために大切なのが、「五感からの刺激」なのです。

なぜ五感の刺激が
重要なの?

赤ちゃんは生まれた時から五感をもち、その後に様々な刺激を受けて脳も体も成長していきます。
赤ちゃんが受ける刺激と脳の発達の関係について、みていきましょう。

そもそも五感とは?

五感とは「味覚」「聴覚」「嗅覚」「視覚」「触覚」の5つの感覚のことです。
赤ちゃんも五感を持って生まれますが、どの感覚もぼんやりしたものです。
例えば、新生児の視力は0.1以下と言われています。
五感は外からの刺激を受けなければ発達しません。
赤ちゃんの周りにあるすべてのものは視覚を、語りかけや抱っこは聴覚や触覚を、
おっぱいや食事は嗅覚や味覚を刺激します。
こうした日常にある穏やかな刺激を繰り返し受けることで、五感は発達していくのです。

味覚,聴覚,嗅覚,視覚,触覚

脳の働きはどうなっているの?

人間の脳は、下の断面図のようになっています。
「大脳辺縁系」と「脳幹」は昔からほとんどの動物がもっている「古い脳」です。生きるために必要な「からだの脳」とも言える場所で、
生まれてから5歳頃までに完成します。
まずはこの脳を健やかに育てることが何より大事。難しいことではなく、早寝早起き、規則的な
食事、たくさん遊んで体を動かすことを心がければいいのです。
「大脳皮質」は100億以上もの神経細胞が集まって、高度な思考や細やかな体の動きを司っています。
「小脳」は、直立歩行や指先を使う運動機能の調整、記憶に関わるなど人間らしい働きを担っています。
「大脳皮質」と「小脳」は人間が進化の過程で発達させてきた「新しい脳」です。

大脳皮質 考える脳 人間の思考の中枢。運動野、感覚野、視覚野、聴覚野など、場所ごとに様々な機能を担う新しい脳, 前頭葉 創造性の脳 大脳皮質の前半部で、思考や創造性、思いやりなど人間にしかない高度な動きを担う新しい脳, 脳幹 生命維持の脳 自律神経の調節やホルモンの分泌、呼吸や反射など、生命維持に必要な働きを行う古い脳, 大脳辺縁系 本能の脳 怒りや恐怖など、動物的な情動を司る古い脳, 小脳 運動の脳 人間らしいからだの動きを司る新しい脳

1大脳皮質〜考える脳〜
人間の思考の中枢。運動野、感覚野、視覚野、聴覚野など、
場所ごとに様々な機能を担う新しい脳
2前頭葉〜創造性の脳〜
大脳皮質の前半部で、思考や創造性、思いやりなど人間にしかない高度な動きを担う新しい脳
3脳幹〜生命維持の脳〜
自律神経の調節やホルモンの分泌、呼吸や反射など、生命維持に必要な働きを行う古い脳
4大脳辺縁系〜本能の脳〜
怒りや恐怖など、動物的な情動を司る古い脳
5小脳〜運動の脳〜
人間らしいからだの動きを司る新しい脳

脳の発達とはどういうこと?

赤ちゃんの脳細胞の数は、実は大人とほぼ同じ。けれど、脳で情報処理を行う神経細胞(ニューロン)同士はつながっていません。
ニューロンは下図のように、一つ一つがヒトデのような形で、様々な方向に樹状突起が伸びています。
樹状突起が他のニューロンと結びつくときに、「シナプス」という接続点をつくっていきます。
生まれたばかりの赤ちゃんにはシナプスがほとんどありませんが、生後急激に増え、必要なシナプスを選別しながら6歳頃に大人と同じ
脳の大きさになります。シナプスが増えることで、言葉を覚えたり、複雑な動きができるようになるなど、人間らしく成長していきます。
つまり、脳の発達とはニューロン同士の適正なつながりをつくっていくことです。
そして、シナプスが増えるために必要なのが、五感からの刺激なのです。五感から受けた刺激が電気信号となってニューロンに送られ、
その信号を別のニューロンに伝えようとするときにシナプスができます。

ニューロン シナプス

拡大すると・・・

ニューロン

ニューロン,シナプス

シナプス

シナプス

安心をつくる
「セロトニン」も大事

脳にとってもう一つ大切なのが「セロトニン」という脳内物質。
セロトニンが活躍する神経系は5歳までにつくられます。
セロトニン神経が未発達だと、不安になりやすかったり、
ストレスに弱い子どもに育ってしまうと言われています。
セロトニン神経の発達とセロトニン量の増加を促すためには、
十分な睡眠と、朝に太陽の光を浴びること、
セロトニンの原材料となる食事をきちんと摂ること。
つまり、赤ちゃんの頃から早寝早起きをして規則正しい生活を
送ることで、気持ちが安定した脳をつくることができるのです。
子どもの健全な脳を育てるためにも、親子で生活リズムをしっかりつくりたいですね。

監修:成田 奈緒子先生

小児科医。発達脳科学者。
文教大学教育学部特別支援教育専修教授。
文部科学省「リズム遊びで早起き元気脳」実行委員長。
子育てを応援する専門家による「子育て科学アクシス」を主宰。

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