病院・施設関係者の皆さまへ
口腔機能維持管理加算
口腔機能維持管理加算とは?
2009年4月の介護保険改定により、口腔機能維持管理加算(30単位/月)が新設されました。これは、介護保険施設(介護療養型施設を含む)において、歯科医師または歯科医師の指示を受けた歯科衛生士による指導のもと、施設職員が入所者に口腔ケアを実施した際に加算ができるというものです。
〈厚生労働省が定める算定基準〉
  1. 介護老人福祉施設、介護老人保健施設又は介護療養型医療施設であり、歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が当該施設の介護職員に対して、入所者の口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回行っていること。
  2. 当該施設において、入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画が作成されており、1.に掲げる歯科医師又は歯科衛生士がその計画の作成にあたり助言及び指導を行っていること。  
口腔機能維持管理加算 適用のメリット
口腔ケアは、誤嚥性肺炎の予防はもちろん、経口維持やQOL(生活の質)向上においてもとても大切です。しかし、「安全で効果的な口腔ケア」の実施に不安を抱えている施設は意外と多いのではないでしょうか。歯科医師や歯科衛生士との連携によりその不安も解消され、口腔ケアの技術面・効率面での向上も期待できます。口腔機能維持管理加算の活用は、口腔ケアに係る介護職員の意欲向上、さらには入所者の健康維持に繋がるのではないでしょうか。
口腔機能維持管理加算 適用のメリットの流れ図

【歯科医師・歯科衛生士(歯科専門家)の介入による効果】

歯科専門家が介護職員とうまく連携することで、様々な良い結果が期待できます。それを示す介入研究の一例をご紹介します1)

介入方法
歯科衛生士の介入方法を違えた施設A・Bにおいて、施設職員の意識調査と口腔内清掃度を評価しました。
施設A: 歯科衛生士の指導のもと、介護職員が口腔ケアを実施。
施設B: 週に1回歯科衛生士が特定の入居者に対して口腔ケアを実施。他の入居者に対しては情報提供と相談のみ行った。
介入期間: 平成19年7月(初回)、平成19年11月(中間)、平成20年3月(最終)

結果 1

歯科専門家との連携で介護職員の口腔ケアに対する意欲が向上

口腔ケアに対する意欲向上グラフ

結果 2

施設職員の口腔ケアに対する自信が向上

口腔ケアに対する自信向上グラフ

結果 3

歯科専門家との連携により入居者の口腔内環境が改善

口腔内環境が改善グラフ

【高齢者の肺炎発症率と口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防効果】

高齢者がかかりやすい肺炎の多くは、口腔内の細菌が肺に誤って吸引されてしまう(誤嚥)ことで起こる誤嚥性肺炎であるといわれています。適切な口腔ケアは、こうした誤嚥性肺炎の予防に有効です。
年齢別死因別死亡者推移表

【口腔機能維持管理加算適用時のコストメリット】

●口腔機能維持管理加算を適用した場合
(例)入所者100名の特別養護老人ホームにおいて入所者全員に適用した場合
※地域単価:10.68円として算出。
年の増収算出表

【誤嚥性肺炎発症時の身体的・経済的負担】

●誤嚥性肺炎で入院した場合の身体的・経済的負担4)
(例)脳血管患者が誤嚥性肺炎にて入院した場合
経済的負担額
●誤嚥性肺炎で利用者が入院した場合の施設の経済的負担
(例)特別養護老人ホームの利用者が年間10名、誤嚥性肺炎により入院(55日間)した場合(入院期間中、空所利用のなかった場合とする)。
※要介護度:4、施設サービス単位(従来型個室):801単位/日、地域単価:10.68円、居住費(従来型個室):1,640円/日、入院・外泊単位:246単位/日を12日分(請求可能上限日数分)請求の条件で算出(日常生活費、食費については除外)。
年の減収算出表
適切な口腔ケアを行うことで入居者にとっては身体的・経済的負担のリスクの軽減が、施設にとっても経済的メリットが期待できます。
経口維持加算 請求の手順

【算定目的】

本加算は、介護保健施設において効率的かつ効果的な口腔ケアを実施するための施設の取組みに対して評価を行うことを目的としています。
年の減収算出表

【算定条件と注意事項】

  1. 介護老人福祉施設、介護老人保健施設又は介護療養型医療施設であること。
  2. 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が施設の介護職員に対して、入所者の口腔ケアに係る技術的助言及び指導を月1回以上行っていること。
  3. 入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画が作成されていること。(歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士がその計画の作成にあたり助言及び指導を行っていること)
  4. 介護職員に対する口腔ケアに係る技術的助言及び指導または入所者の口腔ケア・マネジメントに係る計画に関する技術的助言及び指導は、歯科訪問診療又は訪問歯科衛生指導の実施時間以外の時間帯に行うこと。

【算定に準備しておく書類】

厚生労働省規定の書式はありませんが、以下の内容について記録が必要です。詳細は「参考資料 口腔機能維持管理加算に関する書式例集」をご参照ください。
  1. 口腔機能維持管理にかかわる助言内容

     (資料1参照)
  2. 口腔ケア・マネジメント計画書

     (資料2参照)
経口維持加算の算定に必要な検査
  • 口腔機能維持管理加算に関する歯科医師および歯科衛生士の助言および指導について「歯科訪問診療又は訪問歯科衛生指導の実施時間以外の時間帯に行うこと。」とあるが、歯科訪問診療料は訪問歯科衛生指導料を算定した日と同一日であっても、歯科訪問診療又は訪問歯科衛生指導を行っていない異なる時刻であれば、実施時間以外の時間帯」に該当すると考えてよいですか?5)
  • そのように考えて問題ありません。念のため、指示・指導日時を記録しておくと良いでしょう。
  • 月の途中で退所、入院又は外泊した場合や月の途中から入所した場合はどのように取り扱えばよいのですか?5)
  • 入院・外泊中の期間は除き、当該月において1日でも施設に在所した入所者については、算定することが可能です。
  • 口腔機能維持管理加算を算定する場合入所者に同意書をとる必要はありますか?
  • 特に同意書をとる必要はありませんが、このような取組みの意義・目的等をご家族にお伝えするのも口腔ケアの重要性をご理解頂く良い機会になるのではないでしょうか。
  • 口腔ケア・マネジメント計画書は、加算対象者の方全員に対して必要ですか?
    また、毎月内容を変更しなければならないのですか?
  • 個々の計画書は必要ありませんが、特に注意が必要な方や特別なケアが必要な方はメモを残しておくと今後のケアに有効です。また、計画書の内容については歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士と相談の上、月に1度は見直しが必要ですが、内容に変更がない場合は書換えの必要はありません。内容に変更がない旨、記録を残しておくとよいでしょう。
  • 施設に歯科医師又は歯科衛生士が勤務していなければ加算できないのですか?
  • 施設に歯科医師または歯科衛生士が勤務している必要はありません。地域の歯科医師又は歯科衛生士との連携を活用しましょう。

既に口腔ケアを実施されている施設は多いと思います。より安全で効果的な口腔ケアをめざして、ケア方法の見直しをしてみてはいかがでしょうか。

【口腔ケア方法のポイント】

口腔ケアが
自立している方の
場合
「ちゃんと自分で歯みがきができているから大丈夫」と思いがちですが、意外としっかり磨けていない場合がよくあります。
きちんとケアができているか定期的に確認してあげましょう。
義歯ある方の場合 義歯をはずし、歯みがき・粘膜ケアをします。義歯もブラシ等を使用してしっかり清掃しましょう。

嚥下障害が
ある方の場合

ケア時の姿勢に注意
顎が上がった状態でケアをすると、誤嚥しやすくなります。
なるべく座った状態で、顔を少し下に向けた姿勢でケアすることで水分が喉に流れ込みにくくなります。顎が上がらないように手をそえたり、背もたれや枕を上手に利用し誤嚥を防ぎましょう。
ケアグッズを工夫
吸引ブラシを使用したり、口腔ケア用のウエットティシュで汚れや水分を拭き取るように口の中をぬぐうことで誤嚥しにくくなります。
ケアグッズの工夫
口腔乾燥が
ある場合
清潔にした口腔内に専用の保湿剤を塗布し、乾燥を防ぎましょう。口腔乾燥は口臭や口内汚染の原因になるばかりでなく、摂食機能などにも影響を及ぼし、QOLの低下にもつながります。
舌や粘膜が
汚れやすい方の
場合
口腔ケア用のウエットティシュやスポンジブラシを使用して舌や粘膜のケアをしましょう。乾燥した汚れが口内にこびりついている場合は、保湿剤を塗布し、汚れをふやかしてからケアすると取れやすくなります。

【経口維持加算 請求の手順例】

  1. 「口腔機能維持管理にかかわる助言内容」(資料1) 月に1回以上、必ず歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の指示・指導内容を記載し署名をもらいます。
    助言項目にチェックをつけ、下の空欄に助言内容を記入します。
  2. 「口腔ケア・マネジメント計画書」(資料2) 歯科医師又は歯科医師の指示を受けた歯科衛生士の助言・指導のもと1施設につき1部作成し、月に1回内容の見直しを行います。
    1〜6の各項目について内容を記入し、歯科医師等の指示内容の要点をまとめます。

参考文献
1) 介護老人福祉施設における口腔ケアマネジメントの効果(2009年 花形ら)
2) 平成16年 人口動態調査(厚生労働省統計データベース)
3) 要介護高齢者に対する口腔衛生の誤嚥性肺炎予防効果に関する研究(2001年 米山ら)
4) 要介護高齢者に対する口腔ケアの有用性 医療経済学の観点から(2003年 道脇ら)
5) 平成21年4月 改定関係Q&A vol.2 (厚生労働省通知)
● 介護のための口腔ケア(菊谷 武 著:講談社)

日本介護食品協議会

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