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赤ちゃん通信

No.24 いま話題の「成人病胎児期発症説」を知っていますか

 「成人病胎児期発症説」をご存知ですか。お母さんのお腹にいるときに、すでに病気が始まっているという注目すべき内容です。妊娠前、妊娠中の女性の食生活が大きく左右するというのです。
 日本はいま低出生体重児の出産が増えており、その背景には女性のダイエット志向や喫煙習慣との関連などが指摘されています。小さく生まれた赤ちゃんは、将来的に成人病(生活習慣病)を発症するリスクが高いということもわかってきました。
 日本の出生率は「1.29」と、少子化は進行するばかりです。次世代を担う子どもたちの健康のために、母親となる女性の食生活がいかに重要か。
 今回の赤ちゃん通信は、東京大学大学院助教授の福岡秀興先生に「成人病胎児期発症説」について解説していただきました。


はじめに−我が国の母子の健康状態−

 いま、若い女性の「痩せ・スリム」願望・志向が強く、痩せた女性は確実に増加しています。この痩せは、自分の健康に加えて、次世代への影響が極めて大きいことが明らかとなってきました。Body Mass Index(BMI)18.5未満を「痩せ」といいますが、20歳代の痩せ女性の割合は20年前の1984 年に12.4%であったのが2001年には20.0%、最近は既に25 %を突破しており、その増加に対し歯止めが利かなくなっています1)。30歳代でも7.8%から16.0%に増加しています。痩せた女性は短命であることも明らかとなってきました。しかし一方では肥満の方も確かに増加しています。残念ながら、痩せ群と肥満群共に健康面からは望ましいものではありません。健康な体格を維持することが困難な時代になってきたといえます。今回、私は女性の痩せを取り上げますが、妊娠前のお母さんの痩せは、赤ちゃんの発育に大きなリスクとなります。
 あまり報道されていませんが、注目すべき動向があります。それは低出生体重児(出生体重2,500g 以下を低出生体重児といいます)が著しく増加してきていることです。1980 年代には出生体重2,500g未満の低出生体重児は5.0%台でしたが、2002年には9.1%に増加しています。即ち出生児の10人に1人が、低出生体重児なのです2)(図1)。更に平均出生体重も1980年に3,250gであったのが、最近は3,000g以下に割り込んでしまいました。年齢別にみた平均出生体重についても同じ減少傾向が認められています(図2)。ベテランの助産師の方々は、「今は何故こんなに小さい子どもばかり生まれるのかしら?」とよくいわれます。この20年間に平均出生体重も200gを超えて減少してしまったのです。これは単純に200g程度の減少に過ぎない、と決して軽く考えることはできません。
 一方、巷では「小さく産んで大きく育てる」ことが良いとする風潮があります。低出生体重児の増加を見ると、その考え方どおりに世の中の流れが進んでいる危惧を持ちます。昔は、「妊婦さんは子どもの分まで、2人分の栄養をしっかり摂るべき」といわれていました。ところが一部では「医学の進歩した今からみると、それは昔の考え方」とまでいう方も一部にあります。妊娠中の体重増加の制限が厳格に行われて、体重増加は一律に7〜8kgとする施設もある3)ようです。しかしこの考え方こそが、以下に述べる「成人病胎児期発症説」からすると危険な考え方なのです。小さい児が生まれると「小さく生んで大きく育てる」ことが良いのだとして、うんと多くの栄養を与えて、急激に体重を増やそうとする育児が行われています。大人では多量の栄養価の高い食べ物を摂って体重を急激に増やすことは、如何に危険が高いかは明らかです。
 このような現況は、病気をつくっている可能性すらあります。最近はこの「小さく生んで大きく育てること」が、成人病を引き起こす大きな因子になるという、当然といえば当然の考え方がクローズアップされてきました。その概要をお話します。


図1 低出生体重児の経年的推移
図1 低出生体重児の経年的推移
図2 年齢別の平均出生体重の推移
図2 年齢別の平均出生体重の推移


生活習慣病胎児期発症(FOAD)説とは

 日本は勿論発展途上異国を含めて、世界的に高血圧、高脂血症、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病といわれる成人病が著しく増加しています。
一旦これらの疾患が発症すると、もはや発症する以前の健康体にもどることはなく、治療には莫大な費用を要します。ですから、これら成人病の発症を如何に予防するかが、人類が生き残り発展していく上で大きな課題といえます。現在、成人病は、遺伝素因と環境因子(生活習慣)の二つが発症に関わっていると考えられ、「生活習慣病」と名称が与えられ、生活指導が積極的に行われています。厚生労働省には「生活習慣病対策室」があり、成人病検診は「生活習慣病検診」と名称が変わっています。この名称はあたかも「成人病は生活習慣さえ気をつければ、その発症は阻止できる」という印象を与えている危険があるのでは、とすら私は考えています。しかし同じ肥満者でも全ての人が糖尿病や高血圧症になるでしょうか。そんなことはなく、発症する人と発症しない人がいます。何故そのような違いが起こるのでしょうか。確かに遺伝因子が関与していることは間違いありません。しかし、いま大々的に、成人病を発症する特異な遺伝子構造が分析されていますが、このような特異な遺伝子が原因で生ずる成人病は多くないことが明らかとなってきました。即ちそれ以外の要因を考えなくてはならないのです。その要因として、「成人病は胎児期にその素因がつくられる」、即ち遺伝要因に加えて母親の胎内環境が成人病の発症に深く関与していることが明らかとなってきたのです。成人病はやはり「成人病」の名称で考えられるべきなのです。海外では、「成人病は、胎児期あるいは新生児期の栄養状態によってその素因の約70%が形成され、出生後の生活習慣が加わることで発症する」という説が注目され、全世界的に大掛かりな研究が、疫学、動物実験、分子レベル等多方面にわたって積極的に行われています。
 この説を、20年前から英国サウザンプトン大学の疫学者David Barkar先生学派が唱え始めた“feta1 origins of adu1t disease:FOAD"、「成人病胎児期発症説」4)といいます。しかしこのFOAD説は更にその考え方や概念を拡大して、健康や疾病は胎芽、胎児、新生児期に素因が決定されるとしてDevelopmental Origins of Health and Disease(DOHaD :ドーハッド)説といわれるにいたっています。


FOAD 説の歴史および展望

 この説の由来を考えてみましょう。ヨーロッパでは、古くより、心疾患を発症した女性は、遡ると妊娠中の子宮内胎児死亡および乳児死亡を経験した人が多いことや、新生児・乳幼児死亡率の高い地域では成人の心疾患死亡率が高くて、両者が密接に関係しているといわれてきました。そこで、Barker先生の研究グループが英国を地域毎に分割して、1901〜1910年の乳児死亡率で色分けした地図を作りました。同様に当時生まれた人々が成人した1968〜1978年の虚血性心疾患による死亡率の地図を作成して比較したのです4)。その結果、二つの地図は時間が大きくずれていながら、本当によく似たパターンをしているという大変興味深い結果が見られました。この結果は、乳児死亡率の高い、即ち母体の栄養状態が悪い地域で生まれた児は、成人後に心筋梗塞が多く発症している、ということを示すものです。胎児期、乳児期の栄養と心筋梗塞は見事に関係しているといえます。そこで次に分析したのは地域を限定して同様の現象があるか否かを検討しました。
 それに必要なデータとして、ハートフォードシャーの訪問看護婦の貴重な記録を分析したのです。1903年から1945年まで、ハートフォードシャー役所には、分娩時の助産記録と定期的な家庭訪問で計測した児の発達状態が細大漏らさず、厳格に台帳に記録されていたのです4)。現在この台帳は、Barker先生のサウザンプトン大学FOAD研究所の空調設備の整った部屋に厳重に保存され、多数の専門家がいまも分析を続けています。その様子を見学させてもらいましたが、見事なもので、その感動はいまも鮮やかに蘇ってきます。このハートフォードシャー台帳をもとに、出生時体重と虚血性心疾患による死亡を検討したところ、出生時体重が小さい人たちほど虚血性心疾患による死亡が多いということが予想どおり、見事に明らかとなったのです5)(図3)。心臓病で死亡した多くは確かに予想したとおり、出生時体重が低い群であったのです。くわしく見ると4,400g以上でも死亡率は高いですが、それ以下では出生体重が増える程そのリスクは低くなるという結果でした。これがきっかけになって、出生時体重と成人病発症との関係に強い相関があることに改めて注目し、Barker 先生たちやその他の研究者によって次々と全世界の多くの地域で疫学調査が行われました。その結果、高血圧症、高脂血症、糖尿病その他の成人病は、胎児期の低栄養によって発症することが明らかとなり、バーカー説として流布され始めたのです。
 20世紀には、このFOAD説は「21世紀最大の医学仮説」であるといわれていましたが、いまではその発症機構が明らかになりつつあり、間違いない説として認められつつあります。残念ながら、日本のデータは少ないですが少しずつ報告が増えています。しかしバーカー説は、日本では殆ど知られていません。読者の方々も初めて知った方もおられると思います。胎児期、新生児期という出生前あるいは出生直後の栄養状態が、40〜60歳になって発症する成人病の原因になることは時間的ギャップが長いので容易に理解しがたいのは当然かも知れません。
 人類には、胎内での低栄養の及ぼす影響をみた人体実験といえる歴史があります。それは第二次世界大戦時に、ナチスドイツがオランダに侵攻してオランダの人々が著しい低栄養状態に暴露され、多くの人々が栄養失調で亡くなった(1944年12月〜1945年4月)ものです。一日摂取エネルギーは400〜800kcal というひどい状況にあったのですが、その低栄養に暴露された母親から生まれた子どもたちをフォローする研究が続いています。この母親から生まれた子どもからは多くの人々が成人病を発症していました。暴露される時期によって発症する病気に少し違いがありますが、成人病が高率に発症していたのです。なお骨粗鬆症や統合失調症も発症していました。これは悲しい事件ですが、バーカー説を実証したものといえます。


図3 出生体重と虚血性心疾患死亡の相関性
図3 出生体重と虚血性心疾患死亡の相関性


成人病素因が胎児期に形成される機序

 胎児期あるいは新生児期の低栄養状態が何十年かの後に、成人病の発症に関わってくるのは不思議に思われるかも知れません。しかしそれを納得させる研究成果が出ています。そのメカニズムには二つあると私は考えています。第一には解剖学的な構造変化が胎児期に生じてしまうことです。例として、胎児が膵臓や腎臓がつくられていく時に低栄養に暴露されると、膵臓β細胞、腎臓糸球体などがアポトーシスを起こして数が減少します。するともはや数が増えることはありません。交通事故で亡くなった方などの腎臓をスライスして腎臓糸球体の数を丹念に調べると、生まれた時、体重の少なかった人は腎臓糸球体が減少していることが確認されました。その人々には高血圧が発症していたのです。なおその数が減少する機序は、分子レベルまで見事に解明されています。このように次々に分子レベルまでの解明が急速に進んでいます。
 第二として、遺伝子発現の異常が一旦子宮の中で起こると、発現蛋白の種類によっては出生後も、それが変化することなく持続していくことになります。これは劣悪な胎内環境でも生き抜くための代謝適応の結果生ずるものです。言い換えると、胎児期のある時期〔臨界期〕に低栄養に暴露されると、その低栄養状態で生存できるように、酵素、生理活性物質の受容体、情報伝達系等の多様な代謝応答機構が、本来栄養状態が良い場合に生じている状態からはかけ離れたものとなります。しかし胎内で変化してしまったこの状態は、出生後に栄養状態が良くなっても、変化することなく持続するのです。これを可塑性(plasticity)と一般にいっています。
 その例として、血管内皮から作られる物質を考えてみましょう。血管の内皮からは血管を拡張させる物質が産生されており、血圧の一部を調節しています。低出生体重児ではこの物質を産生する酵素が少なく、血管の拡張が抑制されているのです。妊娠末期に低栄養に暴露された子どもにその傾向が強いことが知られています。現在、出生直後から9 歳頃まで観察されていますが、血管の拡張性の障害が持続していました。またU型糖尿病の原因として、インスリンに対する感受性の低下がありますが、これをインスリン抵抗性といいます。低出生体重児ではインスリン抵抗性があって糖尿病を発症するリスクが高いのです。多くの研究が精力的に続けられていますが、その原因の一つとして、核蛋白のアセチル化現象があります。このアセチル化は、胎児期に起こり、出生後も血管内皮で見たのと同じように持続していきます。その結果、インスリン抵抗性の出現することが明らかとなってきました。糖尿病の一部はこれにより生ずるのです。これらは特殊な蛋白の遺伝子発現の障害されている例ですが、他の蛋白あるいは酵素などでも同じように、胎児期に遺伝子発現の障害が生ずると、それは一生続いていくことが想定されています。このように分子生物学的検討がこの領域では積極的に行われており、機序が解明されつつあります。


胎児が低栄養に暴露される原因は

 以上述べてきた胎児が低栄養に暴露される原因としては、大きく四つがあると考えています。妊娠前の母親の低栄養状態、妊娠中の母親の栄養および体重増加の少ない場合、喫煙などへの暴露、妊娠中毒症や自己免疫疾患による胎盤機能の低下があります。
 まず受精時の母親の低栄養状態が重要です。最初に示したように、若年女性のダイエットによる低栄養状態がいま深刻な問題となっています。妊娠した時点での、母体の栄養状態、即ち受精卵の環境となる卵管内の栄養状態、子宮内や子宮内膜の栄養状態が、受精卵の発育および代謝応答を大きく支配しています。「痩せ群」の母親からは高率に低出生体重児が生まれているのです。わずか一個の細胞の環境が個体の予後を決めてしまうというのは、想像するだけでも怖いですね。それだけに妊娠前の女性の栄養状態は考える以上に重要といえます。20代の女性ではBMI 18.5以下は既に25%を超えています。痩せ群でその頻度が高いか否かの検討はなされていませんが、以前の日本では多くなかった、妊娠初期の葉酸欠乏で生ずるといわれる二分脊椎症(spina bifida)の先天奇形が増加しています。また亜鉛欠乏で生ずる味覚異常を訴える女性が増加しています。これらは若年女性の栄養状態が必ずしも良くないことを示しています。
 一つは妊婦の体重増加の制限があります。日本は母体死亡あるいは妊娠合併症(妊娠性高血圧症候群、妊娠性糖尿病など)の発症を予防することに重点をおいた、世界一ともいえる素晴らしい妊婦検診システムを構築しています。その成果には素晴らしいものがあります。しかし現場の一部では、妊娠中には7〜 8kgの母体体重増加が理想であるとする一律の体重指導を行っている施設もあるといわれています。肥満者、痩せ者に対する個別化した指導が必要となるのは当然といえます。それ故、改めて、痩せ群、肥満群、普通群に分けた肥満度ごとの体重増加量に従い指導する必要があります。年内にはその指針が厚生労働省から出されます。是非参考にしていただきたいのです。ここには日本産婦人科学会が妊娠中毒症(妊娠性高血圧症候群と名称が変わった)を予防するための妊娠前の肥満度毎に示した体重増加基準を示しました(表1)。
 更に喫煙または受動喫煙の影響もあります。妊婦喫煙者に対して、我々は相当厳しい指導を行っているはずです。ところがその頻度は次第に増加傾向にあります。禁煙が如何に困難であるか、医療関係者は痛感しているのが現状です。たとえ無力感に苛まれながらも、何とか妊婦さんたちの喫煙を止めるべく努力を行っています。
 更に抗燐脂質抗体陽性、妊娠中毒症(妊娠高血圧症候群)等による胎盤機能の低下する疾患がありますが、これらは周産期医学上からも妊娠経過を厳重に管理されねばならない疾患です。


表1 中毒症発症阻止のための妊娠中体重増加量
表1 中毒症発症阻止のための妊娠中体重増加量


成人病胎児期発症説を知って私たちは何をすべきか

 長い時間かかって成人病は発症していきますが、発症するまでは体に備わった予備能が働いて病気の発症を抑制していると考えられます。「胎児期に成人病素因の約70%が形成され、残りは出生後の環境がその素因に作用して成人病が発症する」という考え方の重要な点は、成人病発症のハイリスク群か否かを出生前または直後よりスクリーニングすることが可能であれば、その群に対しては望ましい生活習慣を特に指導すること、更に早期より健康診断等を積極的に行って、わずかでも発症の可能性を示す前兆が見出された場合には、早期より積極的な治療を開始することで、より効率的に病気が阻止できるという点です。即ち、成人病胎児期発症説は、最も効果的に、成人病の発症が阻止できるのであるという重要な考え方を我々に示してくれているのです。母親は勿論、栄養の専門家・保健を指導する専門家・周産期医療関係者等の、「罪なき次世代」への責務が想像以上に重いといえますが、バーカー説に立脚することで、その責務は果たせると考えています。その具体的な方策を考えてみましょう。
 女性の痩せ願望は想像を絶するものがあります。それは低学年化してきており、既に小学生まで蔓延しています。妊娠前の女性は、十分な栄養を摂取して良好な栄養および健康状態にあることが必要ですが、現況では難しいかも知れません。妊婦さんは、痩せている方も太っている方もいるので、個人に応じた妊娠中の体重増加を指導し目標とすべきです。BMI の計算をして、各々の群毎に、理想的な体重増加量を指導することで対応することが大切といえましょう。また分娩後に、劣悪な胎内環境で発育した児に対し、小さいからといって、過量な栄養を与えて、急速に体重増加を図ることは危険なのです。出生後に児は、一度体重(BMI)が減少して増加していくというファットリバウンド現象を経過して、体重が増加していきます。小さく生まれた児はこのリバウンドの時期が早くなる傾向が強いのです。この時期が早ければ早いほど、体重の増加量は著しく、中心性肥満を起こし易くなります。それ故、低出生体重児であればあるほど、このファットリバウンド時期を遅くすることが大事なことになります。ヨーロッパでは乳児用のミルクとして、カロリーの少ないアミノ酸組成も考慮したミルクを与えるという臨床研究が大掛かりに進行しており、ファットリバウンドを遅くする効果があるといわれています。また母乳にはファットリバウンドを遅らせる作用があるといわれています。母乳で育った児は将来成人病になるリスクが少ないともいわれていますね。母乳の意義の一つはここにあるのです。小さく生まれた児は、ハイリスク群であるとして、子どものころに積極的に生活習慣の指導を行うことが、将来的に生活習慣病発症の抑制につながるのです。このような生活指導はいままで以上に重要と認識すべきと思います。
 以上より健やかな次世代のためには、妊娠前の女性が十分な栄養を摂取すること、また妊娠中はお母さんの体重や栄養を十分考慮すること、出生児への過量な栄養を与えない、などが基本となります。米国では妊娠中、過量な体重増加の指導に加えて、体重増加が悪い母親への栄養士の徹底的な指導が妊婦検診の重要課題であるともいわれています。胎盤機能の低下によって、低栄養状態で生まれた児は、将来的に成人病を発症しやすいハイリスク児として認識し、先ずはファットリバウンド時期をできるだけ後へずらすために栄養が過量とならないように注意する、また生活習慣を十分指導する、このような積極的な介入が重要であるのです。いま急激に増加している成人病の発症頻度を抑制するには、この「成人病胎児期発症説」を理解し応用することが出発点であり、この説を医療関係者以外にも広く知っていただきたいと願っています。


文 献
1)
健康・栄養情報研究会編:国民栄養の現状 平成13 年国民栄養調査結第一出版 2003
2)
中村 敬:平成14 年度ごはん食基礎データ蓄積事業報告書,2003
3)
河合 蘭:体重制限を受けた妊婦達の声.助産雑誌 57:41 − 45、2003
4)
福岡 秀興監訳,デイビッド・バーカー著,藤井留美訳:胎内で成人病は始まっている,ソニーマガジン社,(東京)2005
5)
Barker DJP, Osmond C. Infant mortality,childhood nutrition, and ischaemic heartdisease in England and Wales. Lancet1986;I:1077-81.



<著者紹介>
福岡秀興先生(ふくおか・ひでおき)
福岡秀興先生(ふくおか・ひでおき)

【略歴】
兵庫県出身。医学博士。東京大学大学院医学系研究科発達医科学助教授。米国内分泌学会・骨代謝学会正会員。日本内分泌学会代議員。産婦人科生殖内分泌学の視点より、妊娠中や思春期の女性の骨代謝や胎児低栄養による成人病発症の機序に関する研究を行っている。第6次、第7次日本人の栄養所要量の策定委員。


コラム
あなたは出産前に赤ちゃんの性別を知りたいですか?
和光堂が行ったアンケート(2005年7月インターネットを通じて実施)に妊娠中の方649人から回答がありました。それによれば「知りたい」が74.3%、「知りたくない」はわずか6.8%、「どちらともいえない」は19.0%という結果でした。
赤ちゃんの性別を知りたい理由のトップは、「ベビー服やベビー用品を準備したい」82.0%、続いて「名前を早めに検討したい」40.5%でした。「心構えができる」「お腹の赤ちゃんに名前で呼びかけたい」という声もありました。
エコー診断などが普及し、出産前に赤ちゃんの性別を知ることは、いまや当たり前となっているようです。


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