和光堂トップ わこちゃんカフェ 赤ちゃん通信  赤ちゃん通信 No.21
赤ちゃん通信

No.21 もっと知りたい”フォローアップミルク”

 現在、子育てに携わっておられる方々は、フォローアップミルクをご存じと思います。では、改めてフォローアップミルクとは何か、育児用粉乳とどこがどうちがうのか、案外ご存じない方が多いのではないでしょうか?
 今回の赤ちゃん通信は、東京慈恵会医科大学名誉教授の前川喜平先生に、フォローアップミルクについてまとめて頂きました。「今やわが国では栄養不足の子どもは見られなくなり、小児科医の多くは子どもの栄養についてほとんど関心を示さなくなりました。けれども小児栄養は、子どもの成長発達・発育の基本です。この大切な小児栄養について、特に乳児期に使われる育児用粉乳やフォローアップミルクについて、小児科医や保健師をはじめとする多くの関係者は、もっと関心や知識を持ってほしい」と呼びかけておられます。

line

フォローアップミルクって?

 牛乳は身近にある、安価で、かつ良質のたんぱく質やカルシウムの供給源として大変有用な食品ですが、いくつかの理由で月齢の低い赤ちゃんには適しません。消化の点からいえば、赤ちゃんも離乳期になると消化管機能が発達してきますので、牛乳でも問題がなくなりむしろ役立ちます。しかし、牛乳はたんぱく質濃度が高く、この時期にはアレルギーを引き起こす心配があり、また鉄の含有量が少なく、ある種のビタミンも不足しています。鉄が不足すると貧血になりますので、牛乳の欠点を補い離乳期の栄養の一部となるように作られたのがフォローアップミルクです。
 すなわち、離乳食で不足する栄養成分を補うことを目的に成分組成を調整した補完食品なのです。実際には離乳が進み、3回食となる離乳後期(9ヶ月頃)から、年少幼児(36ヶ月位)までに使用される栄養食品です。

line

フォローアップミルクの生い立ち

 西ドイツ、フランス、デンマーク、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーなどでは歴史的に古くから酪農が営まれ、その食生活は肉と乳製品を主としてきました。乳児期早期(生後6ヶ月以前)から牛乳が与えられ、鉄欠乏の子どもが多くいたのです。そのためこれらヨーロッパ諸国では、乳児の鉄欠乏を予防することを目的に1970年代にフォローアップミルクが開発され、製造されました。
 フォローアップミルク(Follow-up Milk)という名称は、FAO/WHO(国連食糧農業機構/世界保健機構)のCodex(食品規格)委員会が1976年に用いたものです。その後フォローアップフード(Follow-up Food)と名称が変更され、さらにフォローアップフォーミュラ(Follow-up Formula)に変わりました。ESPGAN(European Society of Pediatric Gastroenterology Hepatology and Nutrition、ヨーロッパ小児栄養消化器病学会)の栄養委員会によるガイドライン(1981年)並びに1987年FAO/WHO Codex委員会の発表では、「フォローアップフォーミュラは生後6ヶ月以降の乳幼児に対する、離乳期の液状離乳食として使用することを意図して製造された食品」とされています。表1には、それぞれに定められたフォローアップミルクの組成規格が示されています。
 一方わが国では、米・豆・野菜を中心とした食生活であったため、月齢が進むにつれて母乳/育児用粉乳だけでは赤ちゃんの成長発達に必要な栄養を取りきれなくなりますので、母乳/育児用粉乳以外の食物できちんと補う必要がありました。そこで1980年には他の諸国に先駆けて、離乳期の栄養の体系を明確に示した「離乳の基本」が確立されたのです。
 わが国の離乳の考え方では、液状の食品(スープ、おもゆ等)を離乳食としてみなさず、母乳/育児用粉乳に固形の離乳食を組み合わせた食生活で考えています。その意味では、フォローアップミルクはわが国では必要のないものでした。

表1 フォローアップミルクの組成規格
表1 フォローアップミルクの組成規格

line

日本にもフォローアップミルク登場

 しかし、今日わが国でも食事の洋風化が進み、手頃で安価な牛乳を離乳の早い段階から乳児に与えてしまう母親が増えてきました。さらに一方では、近年になって牛乳の早期投与が乳児に鉄欠乏を惹起させる重大な原因となることが判明したため、牛乳に代わるもので、しかも育児用粉乳よりは安価なミルクとして考案され登場したのが、わが国のフォローアップミルクなのです。適正な量のたんぱく質、カルシウムの供給の他に、鉄欠乏予防のためのミルクとして鉄が強化され、鉄の吸収を促進する働きを持つビタミンCも増量添加されています。
 わが国におけるフォローアップミルクの原型はチル・ミル(昭和50年、森永乳業)ですが、鉄が含まれておらず、必ずしも離乳期を目指したものではありませんでした。当時わが国の小児科医は「離乳の基本」が確立していることもあって、フォローアップミルクの概念やその必要性を認識しておらず、フォローアップミルクは牛乳の代替品であるとの考えが強く存在しておりました。さらに小児科医との連携がなされぬまま、「離乳期用の粉乳」というキャッチフレーズで販売されたために、育児用粉乳と同列に扱われるようになり、「離乳期になったらば用いるもの」との誤解を生じさせることになってしまいました。
 その後、昭和53年(1978年)にステップ(明治乳業)が市販され、つよいこ(雪印乳業、昭和54年、1979年)、続いてチル・ミルA(森永乳業、昭和55年、1980年)、ワコちゃん(和光堂、昭和56年、1981年)、SMAフォロー(ワイス、昭和56年、1981年)が同時期に次々と発売されました。これらは全て9ヶ月頃から使用のものでした。

line

6・9論争

 ところが昭和63年(1988年)に、SMAフォローがSMAフォロー6と変わり、使用開始を6ヶ月に繰りあげました。これに引きずられて6ヶ月から使用のLFチル・ミル(森永乳業、平成元年、1989年)、つよいこオリゴ(雪印乳業、平成2年、1990年)が発売され、メーカー、小児科医、使用者の間で混乱を生じました。これが6・9論争です。
 「フォローアップミルクは母乳や育児用粉乳の代替ではない」、「離乳が順調ならその必要はない」などの批判があり、日本小児栄養消化器病学会の乳児栄養委員会(1990年)では最終的に「9ヶ月から」の使用を勧告しました。また、平成7年(1995年)に乳児のたんぱく質所要量が減量されたため、現在の製品は全て離乳食が3回食となる9ヶ月頃から使用のものとなり、6・9論争は終わりました。

line

母乳・ミルク・牛乳の成分

 牛乳にはカルシウムやたんぱく質が豊富に含有されており、発育盛りの幼児・学童の栄養食品として大変優れた食品です。しかしながら、母乳は人間の赤ちゃんを育てる乳汁であり、牛乳は牛の赤ちゃんを育てるためのものです。現在の調製粉乳(育児用粉乳)は牛乳成分を基にしていますが、その成分として、糖は乳糖・オリゴ糖に、たんぱく質は乳清たんぱく質を優勢とし、脂肪は植物油・魚油などを使用することによって脂肪酸組成を整えて母乳と同じ成分にされ、更に発育に必要な微量元素やビタミンなどを加えて、限りなく母乳に近づけて作られていますので、母乳が不足する時、出ない時、与えられない時などに母乳の代用品として用いられるものです。
 一方フォローアップミルクは、離乳期後半に与えるミルクとして牛乳の欠点を補い、この時期により適した食品の一つとして作られています。母乳や育児用粉乳の代用品ではありません。ですから離乳食がまだ十分進んでいないうちに、母乳や育児用粉乳をフォローアップミルクに替えるのは間違いです。表2にそれぞれの成分組成の比較をまとめました。

表2 組成の比較
表2 組成の比較

line

6ヶ月からでは早過ぎる!

 フォローアップミルクは育児用粉乳と同様に、牛乳を加工して製造されています。わが国のフォローアップミルクは生後6ヶ月頃から用いても、消化吸収などに支障はありませんが、次のような点から生後6ヶ月では早過ぎると考えられています。
 その理由の第一は、フォローアップミルクには鉄が強化され、かつ鉄の吸収を促進するビタミンCも増量添加されていることです。調乳後の主成分をみると(表2)、フォローアップミルクは育児用粉乳に比べて、たんぱく質と炭水化物が多く、ミネラル(主にカルシウム)も2倍近く多くなっています。母乳や育児用粉乳が主体の離乳期前半でフォローアップミルクを使用した場合には、栄養バランスを崩し、離乳の進行に影響を及ぼす結果になってしまいます。ただし、エネルギーは育児用粉乳もフォローアップミルクも両者ほぼ同じです。
 もう一つの問題は、育児用粉乳に添加されている微量成分の銅と亜鉛がフォローアップミルクには入っていないことです。ですから銅と亜鉛は離乳食から摂取しなければなりません。十分な銅と亜鉛が摂取されるよう、離乳食を十分多く食べる時期(9ヶ月頃)になるまで、フォローアップミルクは使わない方が良いのです。また、フォローアップミルクにはたんぱく質が多く含まれます(図1)ので、月齢の低い頃から用いると所要量を超えてしまう恐れがあります。このような点からフォローアップミルクは、9ヶ月頃になって離乳食を1日3回食べるようになってから使うのが良いのです。

図1 各種乳汁中のたんぱく質含量と含有比率
図1 各種乳汁中のたんぱく質含量と含有比率

line

育児用粉乳より安価

 育児用粉乳は母乳と同様に離乳が完了するまで用いても良いのですが、育児用粉乳は加工過程が複雑であるため高価です。そこで育児用粉乳よりも加工過程が簡単で安価なフォローアップミルクが登場したのです。
 2003年11月現在、わが国ではぐんぐん(和光堂)、ステップ(明治乳業)、チルミルあゆみ(森永乳業)、ビーンスタークつよいこ(ビーンスターク・スノー)、フォローもも(アイクレオ)の5製品が発売されております。各社のフォローアップミルクの成分一覧を表3に示します。各社の成分にはほとんど差はありません。

表3 各社フォローアップミルク成分一覧
表3 各社フォローアップミルク成分一覧

line

アレルギーを予防するためにも

 経済的に豊かになったわが国では、「離乳の基本」も確立し、乳児健診における離乳の指導も十分に行われていますので、栄養障害の乳児はほとんど存在しません。ですからフォローアップミルクは、「離乳後期の優れた栄養食品」としての存在価値と、「アレルギー防止」の価値が大きいのではないかと考えられます。
 現在、わが国では離乳の完了を1歳6ヶ月としていますので、栄養学的にみた場合、少なくとも1歳6ヶ月頃まではフォローアップミルクを与えたほうが良いと思われます。さらに、食物アレルギーによるアトピー性皮膚炎の食事制限が解除されるのは腸管免疫が確立する1歳以降であることを考慮しますと、アレルギー防止の面からは、少なくとも2歳頃まで、望ましくは3歳頃までは使用した方が良いのではないかと考えます。

line

主体は離乳食

 ただし、フォローアップミルクを与えるのは差し支えないのですが、この時期、栄養の主体はあくまでも離乳食(固形食)であることを忘れてはいけません。月齢に応じた固形食を与え、咀嚼機能を十分発達させなければなりません。保育園、幼稚園などの集団生活に入ることを考慮して、3歳頃からは牛乳を与えるのが好ましいと考えられます。

line


コラム
ムシ歯の心配
 母乳やミルクなどを長期間与えていると、虫歯になりやすいといわれますが、今回の母子健康手帳の改正では「母乳は1歳までにやめなくてもよい」とされています。これは、子どもが自然に卒乳できるまでは母乳やミルクを飲ませ続けても良いと解釈できます。哺乳行動は乳児の情緒安定に繋がりますから、哺乳瓶やおしゃぶりも同様に1歳までにやめる必要はないと考えられます。育児相談などでは、母乳や哺乳瓶は1歳6ヶ月から2歳頃までにやめるよう指導しているようです。
 しかしながら、ムシ歯の心配が残ります。どうしたらよいでしょうか。乳児の哺乳行動は、乳首を上顎に押し付け、舌で圧迫して前から後ろへしごいて哺乳します。従って、上の前歯に乳汁が溜まりやすくムシ歯になる傾向があります。下の歯は乳汁の付着が少なく、唾液によって洗われることが多いのでムシ歯になりにくいのです。
 母乳やミルクを飲ませたままで寝かせるとムシ歯になりやすいといわれる理由の一つは、寝てしまうと唾液の分泌が減少し、乳汁が洗い流されにくくなるからです。子どもが寝たあと、綿棒やガーゼで歯、特に上の歯をきれいに拭いてあげましょう。もちろん下の歯までもきれいにすればより好ましいのです。赤ちゃんの歯を拭く専用のティッシュ(ふきふきタイム 和光堂(株))も市販されています。


ひと口メモ
調乳用スプーン
 育児用粉乳やフォローアップミルクには、各メーカーがそれぞれ専用の計量スプーンを添付しています。粉乳の成分は各メーカーで差はありませんが、製法の違いから粉乳スプーン1杯あたりの粉の嵩(かさ)が違います。そのため調乳濃度もメーカーによって異なっています。フォローアップミルクではそれほど厳密でなくても良いのですが、育児用粉乳の場合にはまだまだ腎臓の機能が未熟な月齢の低い乳児が対象ですから、かならず添付されているそのメーカーのスプーンですりきりを守って計量しましょう。


フォローアップミルク Q&A
Q1
母乳栄養で鉄欠乏性貧血が疑われる離乳完了期の乳児にフォローアップミルクを与えても良いですか?
A.
乳児がフォローアップミルクを喜んで飲めばの話です。一般に母乳栄養の乳児はフォローアップミルクを含めて、粉乳を飲みたがりません。鉄を多く含有している赤身の肉、魚、卵黄など離乳食で鉄を補給しましょう。
Q2
体格が小さく離乳食をあまり食べない乳児にフォローアップミルクを与えてよいでしょうか?
A.
現在わが国の乳児では、体格が小さいといっても体質的に心配のない子がほとんどです。養育者の食事の与え方によって体が小さくなっている乳児はほとんどおりません。従って、体格が小さく少食だからといってフォローアップミルクを無理に与える必要はありません。ただし離乳後期から栄養食品として与えることは一向に差し支えはありません。



<筆者紹介>
前川喜平先生
前川喜平先生

子どもを見ると目尻が下がり、自然と笑顔がこぼれてしまうほど子ども好きな根っからの小児科医。
【履歴】
1933年生まれ。1959年東京慈恵会医科大学卒業。1964年医学博士。1965年米国留学(Wisconsin大学リサーチフェロー、1967年Columbia大学クリニカルフェロー)の後、埼玉県立小児保健センター相談部長、国立大蔵病院小児科医長などを経て、1971年東京慈恵会医科大学小児科主任教授。1999年定年退職。同大学名誉教授。2003年神奈川県立保健福祉大学人間総合専門基礎主任教授。
【役職】
第100 回日本小児科学会会頭。1998年より日本小児保健協会会長。
【著書】
乳児健診の神経学的発達チェック 第7版 南山堂 2003年、小児の神経と発達の診かた 改訂第3版 新興医学出版 2003年、ハイリスク児の早期保健相談マニュアル 第2版 日本小児医事出版社 2001年。


ページの先頭へ